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思考の穴 イェール大学集中講義 わかっていても間違える全人類のための思考法

思考の穴 イェール大学集中講義 わかっていても間違える全人類のための思考法/アン・ウーキョン
2023年9月12日/384ページ
目次:わかっていても避けられない? 「流暢性」の魔力―人はすぐ「これは簡単」と思ってしまう 「確証バイアス」で思い込む―賢い人が自信満々にずれていく 「原因」はこれだ!関係ないことに罪を着せてしまう 危険な「エピソード」―「こんなことがあった」の悪魔的な説得力 「損したくない!」で間違える―「失う恐怖」から脱するには? 脳が勝手に「解釈」する―なぜか「そのまま」受け取れない 「知識」は呪う―「自分が知っていること」はみんなの常識? わかっているのに「我慢」できない―人はどうしても不合理に行動する


 心理学において人を惑わせるさまざまなバイアスについて調べ、そのバイアスを正す方法を考案してきた筆者が、これまで大学で講義してきた内容から8つ選択し、書籍化したものです。
 学生のほか人々が日々直面する現実的な問題に関係が深いと思われるものを取り上げたのだそうです。
 特に心理的バイアスというものは取り除くのが困難であることのほか、論理的思考力の向上を図るうえで優れた戦略についても解説しています。
 日ごろから認知心理学などに親しんでいる方にとっては、ただ単にその知見をまとめたものという印象は免れないとは思いますが、分かりやすく具体的な例が豊富であり、この分野に詳しくない方は新たな発見がたくさん見つけられるでしょう。



簡単に理解できる本を読んでいると、その本は書くのも 簡単 だったのだろうと感じるかもしれない。(26ページ)
 短時間の講演などでも十分な時間をかける必要があり、たとえばTEDなどの講演でも1分当たり1時間のリハーサルが必要と言われていることを紹介していします。
 これで思い出すのは、次のピカソの話(伝説?)。
 ある人がピカソに絵を描いてもらいました。しかしピカソは30秒でスケッチを描き上げて、かなりの金額を請求してきます。それに対してその人が「30秒しかかかっていない」と文句を言います。しかしピカソは言います。「いや違う。40年と30秒かかっているんだ」
 この逸話の真偽については議論があるようですが、話の本質はおわかりでしょう。



 次に統計学の本に出てきそうな話。
(略)ミネラルウォーターを毎日1リットル飲んでいる人の79パーセントが、肌が滑らかでみずみずしくなり、見た目が若返ったと 実感 しています。(75ページ)
 これは確証バイアスというよりも、因果関係・相関関係の問題だと思いますが。
 飲んでいる人と飲んでいない人とを、環境を同じにしたうえで比較しなければ証明できないことは明白です。(まあ広告ですから必ずしも証明の必要はないのかもしれませんが。)
 ただし、水を飲んでいるひとは日ごろから飲み物に気を使っている人である、また、水ではなく野菜ジュースを飲んだ人のうち90パーセントが若返ったと感じているかもしれません。
 さらに「実感」というのも要注意ですね。



 また確証バイアスに抵抗する方法も。
 それには「予測できない生活」が有効だそうです。
いつもの行動に異を唱える 練習方法をお教えしよう。(略)メニューから無作為に1品選ぼう。(略)通勤ルートについても、いつもと違うルートを使ってみる(115ページ)
 要は意外性を日常生活に持ち込むということでしょうか?
 この「練習」から連想するのはいわゆるボケ防止の一方策で、それは「毎日○人以上の人と話をする」という習慣です。
 しかしこれはあいさつ程度ではなく、ある程度突っ込んだ話をする必要があります。
 それは、その相手が自分の予測の範囲外のことを言ってくるため、その内容を理解して答えなければならず、結果的にそのことでアタマを使うことになってそれがボケ防止となるというものです。
 その真偽はともかく、いずれにしても偶然や予測できないことは、日常生活にいい効果をもたらすということでしょう。



 最後にプロスペクト理論で気になった点を。
 論文の影響力は、その論文が引用された回数に相関があるということですが。
この論文が引用された回数は、7万回を上回る。(略)ブラックホールに関する論文ですら、その5分の1程度しか引用されていないといえば、この数字の すごさ がすくわかるだろう。(214ページ)
 これだけでは、この「すごさ」は疑問ですね。
 行動経済学と天文学とでは全体として引用される回数は異なるでしょうし、それ以前にその分野での研究者の数や論文の数、学術雑誌の数自体に相当な差があることも考えられます。
 書かれている内容を「うのみ」にしてしならないことは、筆者も同意していただけるのでは?




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