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芥川賞 直木賞 秘話 【 厳格な審査だからこそ 】

芥川賞 直木賞 秘話/高橋 一清
2020年1月20日/204ページ
目次:候補作品がそろうまで 選考委員会前後 なぜこのような受賞作になったか 一夜にして有名人になり、人生が変わる 話題の受賞者、受賞作 受賞式の表裏


 日本文学振興会の事務局長を務められた筆者による、芥川賞・直木賞の選考や作品に関連して、その内情などがきわめて詳細に書かれている本です。
 題名どおり「秘話」と言っていいエピソードもあります。



 1996年(平成8年)に筆者は文芸振興局で日本文学振興会の運営と進行に携わることになり、社長からは「芥川賞を立て直すように」と言われたとのことです。
(当時の)選考会に陪席していて感じるのは、作品の印象批評というより、小説への論評、すなわち 理屈が多い のです。(44ページ)
 そこで、選考会の委員に宮本輝氏と石原慎太郎氏に新たに加わってもらったそうです。
 世間一般の読者の読み方は、両氏の考えに近いものだったと筆者は感じたそうです。
 たしかに賞を授与して世の中の人たちに小説を薦めるわけですから、文学的にどーのこーのという視点は控えるべきなのも当然と言えるでしょう。



 この選考会の議事の記録は大切に保管されているそうです。
秘密会、非公開だから ロクな討議をしていない のでは、とおっしゃる人がありますが、それは間違いです。(55ページ~)
 そして、非公開であるからこそ本音を語るのであり、筆者は公開されたら該当の作者が卒倒してしまうのではと力説しています。
 たしかに審議過程が公開であれば「その審議内容に合わせた」小説が寄せられたり、委員に働きかけがあったりすることでしょう。



 選考が難航することもあるようです。
 なかなか決まらず、ある委員から三篇を選んだらどうかという意見が出たときに、委員の水上勉氏が語ります。
「選考会というものは一篇を選び出すもの(略)。三篇選ぶのは 選考会の体 をなさない。(57ページ)
 さらに互いの委員のメンツを潰したくないだけの会となってしまうとも言ったそうです。
 なるほど委員のメンツを重んじるよりも、いい作品に絞って世間一般の読者に提示するということでしょうか?
 だからこそ、この賞にはある程度の信頼があり、長く続いていることにつながるのでしょう。



 他の出版社の賞では根回し的なものがあるようですが、この賞では一切それはないそうです。
新しく委員になられた方から、「君たちは何も言わないのか」と言われ(略)たことがあります。(60ページ)
 「何も・・・」というのは「根回し」このことでしょうが、それがあったとしてもそのようなことで動かされる選考委員ではないとのこと。
 逆にそのことが逆に委員の気分を害し、選考に不利に働いてしまうこともあり得るでしょう。



 物語の面白さを求める例で、推理小説、探偵小説が挙げられています。
謎解きを主眼とするもので、小説は登場人物の(略)生き方などに深く入らず、表面的な描写にとどめ、(略)仕掛けの奇抜さ真新しさが求められます。(82ページ)
 これでは 人間を描く という文学の目的は希薄になってしまうといいます。
 しかし、小説の読者にはその謎解きやトリックを楽しむ方もいらっしゃるでしょうから、この点をどのように選考過程に取り入れるかはきわめて難しい課題ですね。
 ミステリーにしても、アガサ・クリスティ(1890年イギリス生まれ)の小説のように長く読み継がれているものもあるわけですから。



 最後に筆者の小説観について。
小説は 題材が勝負 です。8、9割がこれで決まり、手法、技法はそのあとです。(103ページ)
 意外にも題材が最優先。
 小説家というと、どうしても「文章がうまい」などという印象を持ってしまいますが、まずは世の中のどんな人・出来事を、どんな切り口で描くかということでしょうか?
 逆に「新人」だからこそ、そのような新しい視点の小説を書き上げることができるのかもしれません。



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