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帝国ホテルと日本の近代 ―「ライト館」はいかにして生まれたか

帝国ホテルと日本の近代 ―「ライト館」はいかにして生まれたか/永宮 和
2023年7月20日/266ページ
目次:頓挫した官庁集中計画、生き残ったホテル 拡大戦略の失敗と会長交代 ライトの波瀾の人生、そして来日 苦難の末のライト館開業 大戦の時代へ 近代の終焉、ライト館の解体


 帝国ホテルについて、戦争、火事、経営不振、新館の建設遅延など苦難の歴史であったことを詳細に描き、このホテルがこれらの危機を乗り越えた過程を追うことにより、近代日本の世相を浮かび上がらせることを目的に書かれた本です。
 それにしても、このホテルは火事が多すぎです。



 いきなりですが開業後20年ほど経過し、ホテル経営を継続するため日本人の支配人が必要となります。
 その支配人にアメリカで美術商をしていた林愛作に白羽の矢が立ちます。(いい意味でも悪い意味でも)
「渋沢さんは、そう云ふ熱心な人なら猶更(なおさら)結構、林愛作のホテルで充分思ふ様に経営してもらひたいとの事でした」(林愛作談話日記)(82ページ)
 渋沢というのは、もちろんこの会社の発起人のひとりである 渋沢栄一 です。気骨があって自分からどんどん主張するような男が好きだったとのこと。
 しかし、畑違いとはいえ良い人選をしましたね。
 美術品の取引のため、アメリカとヨーロッパを行き来していたということは、それだけ多くの宿泊施設にも泊まったことでしょうし。



 林の提案は、ホテル内での郵便局の設置、鉄道の切符の販売、自動車部の設置(ハイヤー)、観光案内誌の発刊、洗濯部の設置(ランドリーサービス)などがあるそうです。
 現代とほとんど変わらないではないですか!
そのグレードと認知度の高さは、ハリウッド映画作品の キアヌ・リーブス を演じる主人公のセリフにも反映されたほどである。(87ページ)
 そのセリフは「洗濯を頼みたい。東京の帝国ホテルでしてくれるような」(I want my shirt laundered like they do at the Imperial Hotel in Tokyo.)でした。
 唐突に「帝国ホテル」と言いますが、有名だからこそこのようなアドリブのセリフが入ったのでしょう。
 
 JM(1995年)




 また、新館の設計者である、フランク・ロイド・ライトの業績を紹介した YouTube 動画も紹介されています。
Frank Lloyd Wright: The Lost Works – The Imperial Hotel





 また、当時の世相についても。
 1929年のニューヨーク株式市場の大暴落をきっかけに世界恐慌が巻き起こります。
 日本でも失業者があふれたのだそうです。
親が苦労して子供を大学にやっても就職先は全くなく、「大学を出たけれど」という流行語が生まれた時代だった。(187ページ)
 歴史は繰り返すといいますが、およそ80年後にも同様な事態が発生します。
 アメリカ発の経済危機に日本は振り回されっぱなしですね。



 太平洋戦争後、帝国ホテルはアメリカに接収され、運営もアメリカが行うことになります。
 しかし、その中でアメリカ軍の衛生管理など、見るべきものが多くあったとのことです。
 例えば食料の運搬、貯蔵について子細にその方法を観察した人が述懐します。
魚類肉類の保安ただ一つにしても、日本は米国に比して劣るところがあり、戦争に敗北する要素の一つ が、またここにも存在した(218ページ)
 衛生管理が厳格であり、糧食(兵士が戦場で食べる)にしてもデザートまでつけて提供されていたのだそうです。
 かたや精神論が横溢しモノがない軍隊、かたやモノがあふれデザートまで食べることができる軍隊。
 当時の国民性と言ってしまえばそれまでですが、(戦争という)仕事の環境を整えることに対する認識には、両国の間に何十年もの差があったのでした。





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