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読み書きの日本史

読み書きの日本史/八鍬 友広
2023年6月20日/258ページ
目次:日本における書き言葉の成立 読み書きのための学び 往来物の隆盛と終焉 寺子屋と読み書き能力の広がり 近代学校と読み書き


 近世までの日本における読み書きという行為が、どのような変遷を辿ったかについて解説した本です。
 書き言葉そのものの在り方のほか、それを成り立たせるための社会的な背景を含めて説明しています。
 特に、幕末期の日本の識字率が、当時世界一だったというような説に対しては、「根拠がないもの」であるとしている点がこの本の特徴です。



 長い間、教材の基本は「往来物」だったそうです。
読みは「おうらいもの」である。(略)文字通りには往来する 手紙 のこと(略)(39ページ)
 つまり「往来物」は手紙の文例集に関する書籍群であるということです。
 これは中国の「所儀」の影響があるといいます。(なお、その関連で「行儀」(ぎょうぎ)は身体動作に関するもの)
 寺子屋などにおける初学者は手紙を手本に文字を勉強していたのですね。
 意外に感じるかもしれませんが、よくよく考えれば日常生活に最も関係する文書は「誰かに何かを伝えるもの」と考えれば納得できます。
 筆者もこれが日本だけの特徴ではないといいます。
文字仕様の初期段階や、あるいは日常的な用途としては、記録や通信 が基本的であった(50ページ)
 小学生もまずは「日記」をつけさせられますからね。
 蛇足ですけど、私は 高知坂本龍馬記念館 に行ったことがあるのですが、展示物のほとんどが手紙であり、なんとなく がっかりした記憶があります。




 過去の識字率について、西洋社会では教会に提出する婚姻届が役に立つといいます。
署名できる者は自署し、できない者は クロスの印 を付けることが慣習となっていた。(104ページ)
 しかし、自分の名前を書くことができるということだけでは、正確な識字率は分からないでしょう。
 小さな子どもでも書けるでしょうし。
 ところで、アメリカの映画で見たのですが、刑務所から釈放される囚人が、収監されたときに刑務所側が預かったその囚人の持ち物を本人に返還する際の受け取り書にバツ印を付けていたのはその名残なのでしょうか?
 




 日本各地にあった「寺子屋」の例も多数紹介されています。
公的な奨励や強制などをともなわず、まったく 自主的におこなわれていた のは、驚くべきこと(122ページ)
 しかし、寺子屋が日本各地で営まれていたわけではなく、地域差がとても大きかったのだろうと筆者も推測しています。
 本書で紹介されている寺子屋の事例をみると、どちらかといえば大きな港がある都市など、各地の商業の中心地であるような町において盛んだったような印象を受けます。
 やはり、人の往来がある(= 情報が集まる)、ある程度裕福である(= 書籍を確保できる)、ある程度時間がある(= 人を使うような大商人)、というような要素があると推測できますが、いかがでしょうか?






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