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「無人戦」の世紀 軍用ドローンの黎明期から現在、AIと未来戦略まで

「無人戦」の世紀 軍用ドローンの黎明期から現在、AIと未来戦略まで/セス・J・フランツマン
(Drone Wars: Pioneers, Killing Machines, Artificial Intelligence, and the Battle for the Future by  Seth J. Frantzman, 2021)
2022年3月25日/321ページ
目次:恐怖の街 ドローンの夜明け―先駆者たち 空中のスパイ―監視 降り注ぐ業火―ミサイル搭載ドローン 殺人マシン―ドローン戦争の倫理 敵の手に渡ったドローン―独自のドローンを作るテロリストたち 反撃―ドローンに対する新しい防衛手段 防御を圧倒するドローン・スウォーム より良く、より強く、より速く―新しい世界秩序 来たるべきドローン戦争―新しい戦場 ドローンと人工知能―終末のシナリオ


  戦争の次の主役はドローンと無人化技術、ガジェットを満載した「自立型兵器システム」であることは明らかであると主張する筆者が、軍事用ドローンに関して、先駆者を含む歴史、現状、それを利用する者(テロリストを含む)などについて解説した本です。
 なぜか日本語版の副題から、原題の「Killing Machines」の部分が抜け落ちていますね。
 筆者が「敵方」のドローン に遭遇した経験も交えて解説しているのも本書の特徴です。
ISISが飛ばしたドローンのうなるような音だ。(略)いつ終わるとも知れない、神経に触る音。(6ページ~)
 2017年のイラクでの出来事だそうですが、そのことが新たな戦争の時代を迎えたことを筆者に感じさせたのだといいます。



 アメリカのドローンは、2012年のトルコの非合法武装組織に対する軍事作戦の支援にも投入されたのだそうです。その成果もあり、トルコはアメリカ製のドローン購入を強く要請しますが、その後アメリカはトルコとの「情報共有」をストップします。
その対応策として、トルコは ドローン兵器の自国生産 を強化した。(93ページ)
 ウクライナの戦場でもトルコ製のドローンが効果的に使用されているとの報道がありましたが、トルコは実戦でドローンの有用性を経験しているからこそ、自国でのドローンを開発したのですね。
 報道を見たとき「なぜトルコ製なのか?」という疑問がわきましたが、本書でその疑問が氷解しました。
 さらにそのドローンを実戦で使用しています。
 2020年にシリア軍の軍用車両や対空兵器「パーンツィリ」を破壊しているのだそうです。
これは、初めてのドローン電撃戦であり、「両陣営がドローンを使用する戦争」という未来の先触れだった。(207ページ)
 実戦で使用してしっかりその性能が評価されているからこそ、他国に輸出できるのですね。



 そして、実戦で最もドローンを使用しているのはアメリカであることが、ある事実でわかるのだそうです。
2018年までの時点で墜落した大型ドローンは世界で254機余り。うち(略)アメリカ製ドローンは 196機 だった。(96ページ)
 この事実はアメリカ製のドローンの性能面や運用面で劣っているのではなく、それだけ数多く使用していると理解していいでしょう。
 しかも、兵器については「バトル・プルーブン(battle proven)」といって、その兵器の効果が「戦いによって実証された」ものであることが重要ですから、その実証例が多くあることにもなります。
 もちろん戦場で使用し欠点などを見つけて改善していくことが必須となります。



 ドローン戦争において最も求められる性能について筆者の意見は。
「T型フォード」のような 使いやすく安価 なドローンなのかもしれない。(206ページ)
 ドローンの性能が向上していますが、必要なのは必ずしも速度が出せるドローン・スウォームでも、大量のミサイルを搭載することができるドローンでもないのでは、と考えています。
 アメリカの方らしく自動車に例えていますが、確かに高性能を求めると、一般的には安価というメリットが失われてしまいます。
 その軍隊の運用方針にもよりますが、いわゆる小隊レベルであれば、たとえ人力での運搬が可能なように小さく軽いドローンが求められるでしょうからね。
 なお、スウォームというのは「群」のことですが、これは多数のドローンで一斉に集団攻撃するのが常道だと思われます。



 小さいといえば、その軍隊の大小にかかわりなく使用できるのがドローンです。
この新しいテクノロジーで「インスタント空軍」を保有することができ、それによって戦争を変えられることを証明した。(215ページ~)
 つまりベテランのパイロットや、滑走路などの大がかりな設備も必要がない点は中小国にとって魅力ではあります。
 ひと昔の毒ガス、細菌兵器といった位置づけでしょうか。
 そして、その魅力についてはテロリストにとっても同じことがいえます。



 最後に筆者の「予言」めいた結論を。
ドローンスウォームやAIや完全な垂直統合の準備ができていない国々は、自分たちが新世界秩序の 負け組 にいることに気づくかもしれない。(287ページ)
 特に小型のドローンの運用は各国手探りであり、ガザ地区、ウクライナ、クルド人居住区、イランなどで「試用」されており、そのノウハウの蓄積により未来の戦争の姿が見えてくるのでしょう。



 なお、以前にご紹介した書籍の内容が本書に引用されています。
 








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